イラスト・文/河原敬吾
タカナシの牛乳をくれる男の元を離れてから数カ月。
雨が降れば、誰かの家の軒先に避難。
晴れた日には、誰かの家の屋根の上で日向ぼっこ。
ブー太郎は、風の匂いを感じながら気の赴くままに過ごしていた。
しかしながら、ここ数日の暑さにさすがのブー太郎も参っていた。
日陰に居ても動く気力を奪われる。今までに経験したことのない暑さだ。
「どうなってるんだ?一体?」
動く気力はなくてもお腹は空くので日陰を選びながらエサを探してゆっくりと歩く。
ふと街ゆくニンゲンを見てみると、数カ月前よりもマスクで顔を覆っている数が多くなっていることに気づく。ブー太郎には理解しがたい光景だったが、ニンゲンは不自由を好む生き物だと知っているので、きっと何か不自由があったのだろうと理解した。
だが、ブー太郎には、あまり関係のないことだ。
しかし、暑い。
お腹が空いているのさえどうでもよくなるくらいに体力が奪われる。
ブー太郎は、ひとまず、クーラーの効いた部屋で体力を回復させることにした。
やはり、頭に浮かんだのは、タカナシの牛乳をくれる男。
あの男の家なら、クーラーも効いてるし何度も部屋に上がったことがある。
縁側も日陰になっていて涼しい。
「また、戻るか」
ブー太郎は、男の家に数カ月ぶりに戻ることにしたが、ふとあの男が何の仕事をしているのか気になった。いつも家に居てダラダラしている。世間では、仕事をしていないニンゲンの事を「プー太郎」と呼ぶらしいが、あの男は「プー太郎」なのだろうか・・・?
少しだけ、男のことを考えたが一瞬で頭から離れた。
まぁ、クーラーが効いていれば、そんなことはどうでもいい。
オレもみんなから「ブー太郎」と呼ばれている。
似たようなものだ。
ブー太郎は、数カ月ぶりに、男のもとへと向かった。
おしまい
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