イラスト・文/河原敬吾

1カ月ほど縁側で過ごしていたブー太郎の姿が見えなくなってから10日。
夜中に戻ってくるかと思い、
お気に入りの「タカナシの低温殺菌牛乳」を置いておいても飲んだ形跡がない。

ブー太郎がどこかへ行ってしまった。

堪らず近所の駐車場や草むらを探してみても姿がない。

1カ月も毎日のように過ごしていると、当たり前だが情が沸く。
「ブー」という鳴き声も懐かしい。

「どこに行ったんだろうか?」

仕事でパソコンの前に座っていても、ブー太郎の事が頭にちらつく。
窓の外を眺めても、ネコの気配すらない。

当たり前のように縁側に居たブー太郎。
そこに姿が見えないだけで、虚無感にさいなまれる。

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「ブ~クション」

ん?誰かが噂してるかな?

ブー太郎は、タカナシの牛乳をくれる男の元を離れ、気の向くままに旅をしてみたくなった。特に理由はないが、強いてあげるとすれば春風が気持ちよかったから。

思い立った時が行動の時。別れの挨拶をしなかったが、衝動には勝てない。

思い出す時が来たら、また、戻ってこよう。

空を見上げると大きな虹。
ブー太郎の心は、ワクワクと踊った。

おしまい