この物語は、かわっちのマスコットキャラクター・チュー尉が疑問に思うことを調査し、後輩のチュートはんぱかせと共に解明していくものです。
(写真提供:関岡木版画工房様)
チュー尉:うわっ!何だ?このおっかねえ絵は?
チュートはんぱかせ(※以下、ぱかせ):これは「浮世絵」ですね。
チュー尉:ウキヨエ? なんだそりゃ?
ぱかせ:浮世絵とは、江戸時代に生まれた絵のことです。“浮世”とは「当世風な」とか「好色」という意味ですが……先輩、分かりますか?
チュー尉:ん、よく分かんねぇな。
ぱかせ:ですよね。要は、「辛い世の中(憂き世)だかウキウキ(浮き浮き)と楽しく生きよう!」ということです。
チュー尉:つまり、ダジャレってことか。
ぱかせ:うーん、まあ、そうですね。当時の生活や風俗、流行などをテーマに描かれた浮世絵は江戸時代の大衆のエンターテイメントとして楽しまれました。
チュー尉:なるほど。浮世絵がどういうものかは分かったぜ。けど、こんなも怖い絵ばっかりなのか?
ぱかせ:いえいえ。浮世絵には色んなジャンルがあります。少し歴史を説明していきますと、浮世絵は17世紀後半に登場しました。そのきっかけを作ったのが菱川師宣です。菱川師宣は本の挿絵を描く絵師でしたが、その絵が本の内容よりも人気を博し、一点物の浮世絵を描くようになりました。そこからより人々に届くよう「錦絵」が鈴木晴信たちによって考案されました。先輩が見たものもたくさんの色が入っていましたよね? 錦絵とは、多色摺りの浮世絵木版画のことを言います。
チュー尉:浮世絵版画? 紙にそのまま絵を描いて印刷するだけじゃダメなのか?
ぱかせ:先輩、江戸時代はまだ印刷技術がなかったんですよ。そこで、絵師が描いた絵を板(版木)に貼り、輪郭線を彫ってその上に和紙を置いて一枚一枚摺り上げていくという手法が取られていたんです。
チュー尉:うぉ~!かなり、時間のかかる作業だな。
ぱかせ:そうですね。なので、浮世絵版画は「絵師」「彫師」「摺師」という三者の分業によって行われています。話が逸れましたが、作業工程については、後ほど説明しますね。 えっと、話を元に戻しますと、鈴木晴信の後、喜多川歌麿たちが吉原・遊女の「美人画」や東洲斎写楽たち歌舞伎役者の「役者絵」などを確立していきます。天保の改革での贅沢禁止令で行き詰まりはしますが、葛飾北斎という人物が「名所絵」という風景画を描いたことで、浮世絵は再び隆盛します。大衆は今ほど自由に観光旅行に行くことは許されていなかったので、参勤交代での江戸土産や絵葉書として送られたものを眺めることで旅行体験気分を味っていたのかもしれませんね。
チュー尉:なかなか、ロマンチックな話だなあ。で、浮世絵版画ってどうやって作るんだ?
ぱかせ:先輩はそれが気になって仕方ないんですね(笑) それでは、作業工程を説明していきましょう。
チュー尉:待ってました!
ぱかせ:先ほど説明した通りですが作業工程は、大きく分けて3つに分類されます。まずは、絵師が「画稿(がこう)」という下絵を墨一色で描き、次に決定稿となる「版下絵」を描きます。絵が描き終わったら次は彫師の出番です。版下絵から「主版(おもはん)」と言われる版画の土台を彫り、完成したら主版を複数枚摺って絵師が「色さし(配色の指示入れ)」を行い、それを元に彫師が色版を彫っていきます。
チュー尉:ひゃ~! 一枚の絵を作るのに、こんなにも時間がかかるのか?
ぱかせ:先輩、まだ終わってませんよ!最後に、彫り終わった版木を摺師が紙に摺って完成させるのですが、この作業がなかなか大変なんです。色むらやズレなく1枚1枚同じように仕上げていくには職人の繊細さと鍛えられた技術が必要なんです。どうですか、先輩?ご理解いただけましたか?
チュー尉:よくわかったけど、こりゃ、大変だな~!
ぱかせ:先輩、「朝飯前」って知ってます?
チュー尉:ん?馬鹿にしてんのか? 流石に知ってるぜ!
ぱかせ:「朝飯前」とは、諸説ありますが、浮世絵の初摺200枚を摺り終えるのにかかる1日の時間を示すのが由来だそうです。昔は電気の照明なんてありませんからね。夜が明けて日が沈むまでが人々の働ける時間です。
チュー尉:なるほど~! 朝飯前、朝飯前、朝飯……ぱかせ、腹が減ってきちまった。昼飯でも食いに行こうぜ!
ぱかせ:何なんですか(笑) じゃあ、さっき来た商店街で何か食べましょう!
チュー尉:いいな!行こうぜ~!
おしまい
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