約20年前、某カラオケメーカーに出向し新宿歌舞伎町や横浜の夜の街を取材して回ったことがある。

某カラオケメーカーが、Hot PepperのNight版のようなサイトを立ち上げることになり、取材し原稿を書ける人間を探していたところ巡り巡って僕の所に仕事がきた。
わかる人にはわかるかもしれないが、今でいうシティヘブンネットのようなものだ。

半年間で、250店舗1,000人ほどに出会い取材。
キャバクラ、バー、スナック、少しエッチなお店やゲイの方々が出会う場所など20代半ばの僕には刺激的に感じられたし緊張もしたが、この時の経験は今でも僕の中で財産として残っている。

出向初日、中野にあるカラオケメーカーの支店に出向くと挨拶もそこそこに歌舞伎町エリアの担当営業マンを6人ほど紹介され各営業マンが担当している店舗を取材することを説明された。営業マンが自分のお客さんにアポを入れ、アポが取れ次第、僕が取材するという流れ。営業マンにしてみたら自分のお客さんを若造に紹介することになる。ましてや、取材をするということになると「若造がお客さんに失礼な事をしないか?」と訝し気に僕を見ているのが伝わってきた。

社内の雰囲気は圧倒的体育会系のノリ。とにかく威勢がいい。フロア全体で数十人居る営業マンたちがドスの効いた声で電話をしまくり、時には怒声のような大声が飛び交っている。

少し圧倒されそうになったが「なめられたら終わる」と思い気合を入れた。

まずは威勢のいい営業マンたちに信用されるため、郷に入れば郷に従え、挨拶や行動を真似て、野太く少し低いトーンで「おはようございます。よろしくお願いします」と腹の底から声を出し、スマートにテキパキと動いた。

内心はビビっていたが「なめんなよ」と言わんばかりに背筋をピッとし堂々と恰好をつけて出来る人間を演じてみた。

「TOKYO GRAY」の正体を知るために血気盛んだった僕は、夜の街、威勢のいい営業マン…「TOKYO GRAY」の正体が垣間見れる気がして心が躍った。

(次回へ続く)